入会案内
お問い合わせ

vol.29|チャントーヤココナッツカリー

2025.08.01

癖がないのがクセになる
ココナッツカレー専門店

たっぷりの夏野菜が彩りよく盛られた「野菜カレー」。オクラの粘りやグリルキャベツの香ばしさが、まろやかなココナッツソースにとけ合う。中央には湯むきトマトが大胆にのせられ、清涼感とコクが共存する1皿。

日本一のカレーの街のココナッツカレー専門店

食べログマガジンや神田カレーグランプリ公式サイトによると、神田界隈にはカレー屋が400軒以上あるという。カレーを提供している喫茶店やとんかつ屋なども含まれているが、エリア内でのカレー店の軒数はぶっちぎりで日本一である。そして、最もカレー店の密度が濃いのが神保町周辺だ。世界一の本の街は日本一のカレーの街でもあるのだ。同じくカレーの街として知られる札幌はスープカレーが大半を占めるが、神保町エリアにはインドカレー、欧風カレー、スープカレー、キーマカレー、タイカレー、ネパールカレーなどさまざまなジャンルのカレー屋が集まっている。この中に食べログの百名店に2022年から3年連続で選出されているココナッツカレーの専門店がある。「チャントーヤココナッツカリー」である。ココナッツカレーといえばタイ料理屋で提供しているイメージだが、専門店というのはあまり聞いたことがない。「百聞は一食にしかず」というわけで、夏の日差しを浴びながら行ってみた。
場所は JR 御茶ノ水駅から徒歩5分ほど。神保町駅から7~8分。太田姫稲荷神社の向かいに建つ昇龍館ビルの1階である。路地に面した側にひっそりと佇んでいるので、うっかり通り過ぎてしまいそうだが、ランチタイムともなると列ができるのでその心配はない。

店長の伊澤弘希さん(30)。オープン当初、17歳の時にアルバイトスタッフとして働き始め、その後、他の飲食店で修業を積んで3年前に店長として戻ってきた。「本当は厨房に立ちたいんですけど、今は新店オープンの準備でそれどころではないですね笑」。

店内の壁に飾られたサーフボード。オーナーの “海好き” が随所にちりばめられた空間デザインが、カレー専門店とは思えない開放感を生み出している。

ミャンマー人の名を冠した店名

灼熱の路地裏から一歩足を踏み入れると、ひんやりとした空気が身体を包む。冷房の効きだけでなく、木目の床と壁、白く整えられたカウンター奥の壁が、どこか海辺のカフェを思わせる。カレー専門店というより、湘南や鎌倉のカフェに迷い込んだような空間だ。
「オーナーがサーフィン好きということもあり、海をテーマにした内装になっているんです」と話すのは店長の伊澤弘希さん。メニューには15種のカレーがラインナップしているが、いずれもココナッツカレーがベースである。ココナッツカレーといえば、タイカレーであるが、店名のチャントーヤはタイ語ではなさそうである。「トーヤというのは、この店のオープン時のシェフの名前なんです。ミャンマー人だったんですけど、カレー料理の腕前にオーナーが惚れ込んで、この店を開くことになったんです」と伊澤さん。元々、親会社はアパレル企業で飲食店とは無縁だった。中野にオーナーが気に入っていたカレー屋があり、そこで働いていたのがトーヤさんだった。しかし、店が閉店することになり、トーヤさんのカレーが食べられなくなるのは惜しいということで、2011年に自らカレー屋をオープンさせたのだった。5年ほど前にシェフは本国に帰ってしまったが、秘伝のレシピで今も変わらぬ味を提供し続けている。

店名の由来は創業時のシェフ「トーヤ」に、“おとうちゃん、おかあちゃん” の「チャン」を重ねたもの。シンプルで洗練されたロゴが、路地裏の店先で静かに存在感を放っている。

白木を基調とした明るい内装は、まるで湘南のカフェのよう。カレー専門店らしからぬ清涼感のある空間で、女性客からの支持も厚い。

カレーなのにとんがっていない独特の味わい

2022年、2023年、2024年と3年連続で食べログの百名店に選出された秘伝のレシピとは、どのようなものなのか。
「一言でいうと、タイカレーを日本人の舌に合うようにアレンジしたカレーですね」と店長。タイカレーは好きな人はとことん好きだが、一方で「クセがある」「スパイスが強すぎる」と苦手意識を持つ人も少なくない。同店のカレーは、そうした壁を取り払うようなレシピになっている。
「ウチのカレーの特徴は、特定のスパイスやハーブがとんがっていない点です。毎日でも食べられるようクセのない調合をあえてしています」。たとえばチリ、ジンジャー、コリアンダー、クミンなど12種類のスパイスを用いるが、どれかが突出することはない。しっかり香るのに、角がない。そこに、この店の味づくりの妙がある。
というわけで、まずは清涼感ただよう「野菜カレー」をいただく。白いプレートに盛られたのは、ナス、ピーマン、オクラ、キャベツ、トマトといった色とりどりの野菜たち。料理は目で楽しむというが、まさに映える一品。オクラのとろみがソースに柔らかく溶け込み、ひとさじごとにまろやかな旨みの層を広げていく。ベースとなるのは、ココナッツミルクの自然な甘みがやさしく広がるソース。だがその口当たりは決して重くない。やさしい甘みがすっと引いていき、あとには軽やかな余韻だけが静かに残る。丁寧な火入れがされた野菜たちのしゃきっとした歯ごたえも心地よい。ちなみに同店のカレーには、小麦粉も卵も牛乳も使われていない。レッドカレーペーストをココナッツミルクでのばしただけの、潔いルウである。
続いては「チキンとナスとトマトの焼チーズカリー」。焼き目をつけたチーズが表面を覆い、その香ばしい香りが立ち上る。ひと口運べば、チーズの焦げの風味とスパイスの香りがとけ合い、ココナッツベースのソースにぐっと深みが加わる。チキンはやわらかく、トマトの酸味とナスの甘みが調和して、まろやかで落ち着きのある味に仕上がっている。派手さはないが、じわじわと旨みが広がる。スプーンを進めるうちに、また食べたくなる理由がわかってくる。席数はカウンター含めて全20席。ランチタイムには2時間で4回転することもあるという。
客層は女性が中心で、味の軽やかさもその理由のひとつだろう。大型商業施設からの出店依頼も絶えないが、注文ごとに具材を炒め、ソースと合わせて仕上げるスタイルのため、広いキッチン設備が必要になる。現状では出店は見送っているが、7月中には板橋区大山町に2号店をオープンさせる予定だという。
店名の「トーヤ」は、創業時のシェフの名前から。「チャン」は “おとうちゃん、おかあちゃん” の “チャン” をとって、オーナーが親しみを込めて名付けた。創業から15年、チャントーヤは今、新たなフェーズへと歩み始めている。

ナス、ピーマン、オクラ、キャベツ、そして丸ごとトマト——そのひとつひとつに丁寧な火入れが施され、しっかりと食べごたえがある。見た目にも満足感のある1皿だ。

とろけるチーズに香ばしい焼き目がついた「チキンとナスとトマトの焼チーズカリー」。チーズのコクとスパイスが溶け合い、まろやかさの中に奥行きのある旨み。ふわりと立ち上る焦げの香りが食欲をかき立てる

※金額は『法人なかま』発行当時のものです。

レポート◎山根和明(広報委員会)

食いしん坊手帖 vol.29

チャントーヤココナッツカリー

東京都千代田区神田小川町3-28-7 昇龍館ビル1F
電話:03-5281-4747

  • 営業時間
    【月~金】11:00~22:00(L.O.21:30)
    【土日祝】11:00~21:00(L.O.20:30)
  • 定休日
    無休(年末年始などを除く)
  • 席 数
    20席(テーブル14席、カウンター6席)

当ページに掲載している情報は、『法人なかま』発行当時のものです。現在の情報とは異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

トップへ戻る