入会案内
お問い合わせ

vol.28|神田つり食堂サクラ

2025.07.01

神田駅前で「釣って食べる」非日常

ホンモロコの南蛮漬け。ワカサギよりも滋味があり酒のアテとしても秀逸。

神田駅前に釣り堀居酒屋が誕生!?

JR 神田駅から徒歩1分。今川橋交差点の一角に、昨秋オープンした少し風変わりな店がある。その名も「神田つり食堂サクラ」。名前から新鮮な魚料理を出す和食店を連想するかもしれないが、正解とは言いがたい。一言で表すなら“釣り堀居酒屋”。だが、その内容は想像以上にユニークだ。店のスタイルは確かに “ 釣り堀居酒屋 ” なのだが、ここで釣れるのはマダイやアジではない。体長7~15cm ほどの小魚だ。
1階には6人掛けのテーブルが3卓。いずれのテーブルにも中央に水槽がはめ込まれている。客はここで釣りを楽しみながら、食事やお酒を味わうことができる。テーブルは特注品。水は最低でも週に1~2回入れ替え、特別な浄水器で浄化した水を使用している。ここまでして釣り堀にこだわる理由は何なのだろうか。「実はこのビルの地下にウチの釣具店があるんです。本来、釣りは気軽に楽しめる遊びでしたが、都市部から自然が消えたのと、子供だけで釣りに行けるような時代ではなくなってしまい、釣りを身近に感じられる機会がめっきり減りました。そんなわけで以前から、釣りを楽しめる飲食店を開きたいと思っていたんです」。そう話すのは、櫻井釣漁具株式会社の副社長であり、「神田つり食堂サクラ」のオーナーでもある櫻井真行さん。
水槽の中を泳いでいるのは、埼玉県の養魚場から定期的に仕入れているホンモロコ。元々は琵琶湖の固有種で、関西では京都の料亭などでも珍重されてきた。
釣り料金は30分コース600円、60分コース1,000円。現在は “ 釣り放題 ” だが、釣った魚はすべてリリースとなっている。あくまで釣りは遊びとして楽しんでもらい、食用のホンモロコは別途仕入れたものを提供する。料金にはその唐揚げ(3尾)が含まれており、カリッと揚げた香ばしさと淡白な身の旨みが、川魚のイメージを覆してくれる。

今川橋の交差点の一角にある「神田つり食堂サクラ」。

水槽の中を元気に泳ぐホンモロコ。テーブル横から眺められるようになっていて、子供たちに人気がある。

1階は水槽がセットされたテーブルが3卓。2階では釣りはできないが12人分の席がある。

釣りは、食後の “ 真剣勝負 ”

「釣りをしている時はドリンクのみにしていただいています。でも皆さん、最初から釣りをやってしまうと、ついつい夢中になってしまい、お客様が無言になってしまいます。ですから、最近は食べて飲んでいただいた後に、和気あいあいと楽しく釣りをされることを推奨しています」と、櫻井さんは目を細める。
道具とエサは持ち込み禁止だが、専用の釣り具が用意されており、釣具店直営ならではの本格仕様。ホンモロコは口が小さく、アタリがあるのになかなかハリ掛かりしない。これがまた絶妙なもどかしさを生み、気がつけば時間を忘れて没頭してしまう。
昨年10月のオープン当初は、水槽内の魚の9割が酸欠で死んでしまうこともあったという。それでも試行錯誤を重ねて、今のスタイルにたどり着いた。平日は都内勤務の会社員が多く訪れ、土曜日には家族連れで賑わうようになってきた。その中には「今度、子供を連れてきてあげよう」という親心で訪れる人も少なくないという。

こんな感じでテーブルの中央に水槽がはめ込まれている。食事をする際には蓋をする

神田法人会青年部会の若林勇也さんも、すっかり釣りに夢中。

ホンモロコに雪鱒、そしてマグロまで

都内でホンモロコを食べられる店はほとんど聞かないが、「神田つり食堂サクラ」には、もう一つ珍しい魚がある。
それが「雪鱒(ユキマス)」だ。北欧原産のサケの仲間で、日本には1926年に移入された。英名は「ホワイトフィッシュ」。当時、我が国にはすでに “ 白魚 ” の名を持つ魚がいたため、“ ユキマス ”と名付けられた。世界で初めて完全養殖に成功し、現在では長野県で養殖され、「シナノユキマス」として流通している。
サケ科でありながら身は白色。熟成したカンパチやマダイのような濃厚な滋味があり、とても淡水魚とは思えない奥深い味わいだ。そして、店のもうひとつの看板料理が「マグロ」。その仕入れ先は、江戸時代から続くマグロ仲卸専門店「樋ひちょう長」である。豊洲市場の中でも「4大仲卸」のひとつに数えられる老舗で、全国の高級すし店やホテルからも厚い信頼を集めている。特徴は、特定の産地に縛られず、世界中のマグロから“ いま一番おいしいもの ”だけを見極めて仕入れている点にある。プロの目利きがあってこそ可能な芸当だ。
こうした老舗仲卸との取引は、通常なら長年の関係がある固定客に限られる。しかし「櫻井釣漁具株式会社」は、1888年創業の「サクラ高級釣竿」のメーカーとして、全国の釣り愛好家から信頼を集めてきた老舗。長い歴史の中で培われた縁をたどり、「樋長」との取引が実現したという。
もちろん、雪鱒やマグロ以外にも、四季折々の魚介類がメニューにラインナップされている。時には「サクラ」釣竿のファンが釣り上げた鮮魚が、その日のメニューに並ぶこともある。釣りと料理をつなぐ一期一会の味わい――それがこの店の真骨頂である。

取材日のマグロは和歌山県那智勝浦産のクロマグロ。右下の白イカの上にある白身が雪鱒だ。

雪鱒のカルパッチョ。サケの仲間だけあってカルパッチョにもよく合う。

キンメダイの煮付け。マグロや雪鱒、ホンモロコ以外にも四季折々の魚介類を楽しめる。

※金額は『法人なかま』発行当時のものです。

レポート◎山根和明(広報委員会)

食いしん坊手帖 vol.28

神田つり食堂サクラ

東京都千代田区鍛冶町1-8-1 神田サクラビル 1F
電話:080-2955-0964

  • 営業時間
    【ランチ】月~金 11:30~13:30(L.O.13:30)
    【ディナー】月~金 17:30~22:00
     (料理 L.O.21:00/ドリンク L.O.21:30)
    【土 曜】11:00~20:00
     (料理 L.O.19:00/ドリンク L.O.19:30)
  • 定休日
    日曜・祝日
  • 席 数
    1階 テーブル席(6人掛け)×3卓、2階 テーブル席(4人掛け)×2卓、テーブル席(2人掛け)×2卓
    ※釣り体験は予約推奨。詳細は公式サイトをご確認ください。

当ページに掲載している情報は、『法人なかま』発行当時のものです。現在の情報とは異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

トップへ戻る