
御茶ノ水で「お茶」を食べる。

お茶料理五種盛り合わせ。旬の食材と異なる茶葉との掛け合わせが楽しめる。
御茶ノ水という名の由来
御茶ノ水駅から徒歩3分。神田駿河台の坂道を下った一角に、黒の縦格子と濃灰色の外壁が印象的なファサードが現れる。「ホテル龍名館お茶の水本店」である。明治32年に「旅館龍名館本店」の名で創業され、2014年に現在の姿にリニューアルされた老舗だ。
「レストラン1899お茶の水」は、“ 日本茶を食べる ”という発想のもと、このホテルの1階に誕生したレストランだ。木の温もりを基調とした和モダンな空間に、窓の向こうの緑が静けさを演出する。お茶の香りに包まれながら食事ができるこの場所は、東京でも数少ない、いや、ほぼ唯一の “ 茶料理専門店 ” である。この「お茶をテーマにしたレストラン」という構想は、開業前に決まっていて、その料理長として白羽の矢が立ったのが大久保将史さんだった。
「最初は、“ 日本茶のレストランって何を出すんだろう? ”と戸惑いました。でも調べていくうちに、香りの面白さや、茶葉をまるごと使える利点に気づいて。これは面白い世界だなと感じました」と当時を振り返る。さらに、店の立地である “ 御茶ノ水 ”という地名も、大久保さんにとっては大きなヒントになった。
「江戸時代、徳川秀忠がこの地の湧き水でお茶を淹れたことから“ 御茶ノ水 ”と呼ばれるようになった――そんな歴史を知ったとき、背中を押された気がしましたね」。
店のコンセプトと、土地の記憶と、素材の可能性。その三つが静かに重なり合って、レストラン1899お茶の水の茶料理が生まれていった。

テラス席はビアガーデンシーズンは連日のように満席になる。

お茶料理を味わうのにふさわしい和モダンな店内。

店長兼料理長・大久保将史さん。日本茶と向き合うことで“ 新しい素材”としての茶を掘り下げる。
「『法人なかまを見た』と言っていただければ1899オリジナルティーバッグをプレゼントさせていただきます!」。
香りだけではないお茶の効能
前菜として供されたのは「お茶料理五種盛り合わせ」(1,080円)。この日の内容は、サクラエビとウドの碾茶きんぴら、煎茶ローストビーフ、ほうじ茶を使ったホタルイカの沖漬け、和紅茶のシラスしんじょう、そしてカレイの緑茶南蛮漬け。
「昔から、魚をおろした後は氷水にくぐらせて身を締めていたんです。でも、あるとき氷水の代わりにお茶でやってみたら、脂がすっきり落ちて、臭みも取れていたんですよ」と大久保さん。和食の現場で培ってきた経験に、日本茶の効能がふと重なった瞬間だった。
「お茶って、味だけじゃなくて働き方も面白い。香り、渋み、清涼感、そして脂を整える力がある。調味料じゃない、新しい “ 素材 ”として向き合えるようになったんです」。
特に印象に残ったのがホタルイカの沖漬けだ。沖漬けとは、生きた状態のイカを醤油、酒、みりんなどの調味液に漬け込んだ一品。ホタルイカの沖漬けは丸ごと食べるのでさらに旨味が凝縮され、酒肴として人気がある。一方、生臭さを嫌う向きも少なくない。しかし、ほうじ茶のカテキンやタンニンが作用しているのか、特有の生臭さが全く感じられなかった。
「これがお茶の効能なのか」と食べて納得。五種盛りは、こうした発見の積み重ねから生まれている。お茶により整えられた香りと余韻を楽しめるこのセットは、茶料理の入口としても格好の一皿だ。
さらに、料理とともに楽しめるドリンクにも注目したい。
「1899抹茶ビール」(790円)は、生ビールに宇治抹茶を合わせたビアカクテルで、まろやかな苦味に青々とした香りが重なり、のど越しも軽やか。
一方、「1899抹茶ワイン」(790円)はフランス産の白ワインに抹茶をブレンドした一杯。抹茶の渋みと白ワインの酸味が絶妙に調和し、茶の香味をしっとりと残してくれる。
どちらのドリンクも、料理の魅力を引き立てながら、1899という店の哲学を静かに伝えてくれるのだった。

フランス産の辛口の白ワインと宇治抹茶の香りが料理を引き立ててくれる。

世にも珍しい抹茶ビール。生ビールの喉ごしに宇治抹茶の爽やかな苦みが香る。
茶葉ごとの個性を、肉の中に
続いていただいたのは「お茶ソーセージ盛り合わせ」(1,800円)。信州産ポークに粗く刻んだ茶葉を練り込んだ、1899オリジナルの低添加ソーセージで、緑茶・番茶・紅茶の3種が盛られている。それぞれのソーセージから立ちのぼる香りは、はっきりと違いがあり、茶葉の個性が一目瞭然だ。
緑茶のソーセージは、ふんわりとしたマイルドな香りが肉の甘みを引き立てる。
紅茶のソーセージは、口に含むとまさに “ あの紅茶の香り ” が広がり、上品な余韻を残す。そして番茶のソーセージは、ほんのり燻したようなスモーキーさが脂と重なり、深みのある味わいに仕上がっている。
添えられた粒マスタードを合わせれば、さらに香りの層が重なり、ひと皿の中で茶葉の表情が何通りにも変化する。
「ソーセージって重たくなりがちですが、茶葉を使うと後味がすっと引くんです」と大久保さん。茶の香りや作用までも料理に引き込んでいる店は、ほとんど例がない。御茶ノ水という地名の由来にも通じる “ 茶の力 ” を、料理で体感できる稀有な一軒――それが、レストラン1899お茶の水である。
なお、6月2日から9月30日までは同店の人気イベントである日本茶づくしのビアガーデン「抹茶ビアガーデン」が開催される。抹茶ビールや抹茶ワイン、抹茶ハイボールなども含まれた飲み放題料金3,500円と良心的。予約は必須だ。

三種の茶葉を練り込んだお茶ソーセージ盛り合わせ。緑茶・紅茶・番茶の個性が際立つ。
※金額は『法人なかま』発行当時のものです。
レポート◎山根和明(広報委員会)
食いしん坊手帖 vol.27
東京都千代田区神田駿河台3-4 ホテル龍名館お茶の水本店 1F
電話:03-3251-1150
- 営業時間
【ランチ】11:30~14:00(L.O.13:30)
【カフェ】14:00~17:30(L.O.17:00)
【ディナー】17:30~22:00(L.O.21:00)
- 定休日
日曜・祝日(ディナータイムは休業) - 席 数
店内40席、テラス36席
※貸切の場合もあるので来店の際はHPを参照してください
当ページに掲載している情報は、『法人なかま』発行当時のものです。現在の情報とは異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

