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vol.18|四季の味 おかず家

2024.09.01

女将が一人で切り盛り隠れ家的な小料理屋

名物のおばんざい盛り合わせ。もちろん酒類も各種取り揃えている

行きつけの店

小料理屋という響きには、家庭的な温もりを感じられる。隠れ家という響きには、どことなく妖艶な魅力を感じられる。もし、隠れ家的な小料理屋が近くにあると知って、暖簾をくぐらずにいられる御仁はどれくらいいるだろうか。
神田神保町二丁目の「四季の味 おかず家」は、どこをどう切り取っても隠れ家的な小料理屋である。店主の関根千絵さんは、きれいで落ち着いていて、画に描いたような小料理屋の女将だ。飾り気のない笑顔が、ビジネスでささくれ立った心を和ませてくれる。実はこの店は本誌7月号の「神田わが街」で紹介したデジタル推進特別委員会の中尾英己委員長や、神田法人会第一地区の水野純治地区長の行きつけの店なのである。
「神保町に所縁はないのですが、趣味がマラソンと登山なので、皇居ランをした後によく神保町の登山用品店に来ていました。和食屋さんがあまりなかったので、お店を出すならこの落ち着いた町がいいなとずっと考えていたんです」と関根さん。大学卒業後、事務職として一般企業に就職したものの、いつかは自分のお店を持ちたいという夢を諦めきれずに、退社して飲食店で働くことに。飲食店といってもいろいろな選択肢があるので、自分は好きな和食の道に進もうと29歳の時、新宿にあった和食屋のキッチンで働き始めた。5年間その店で修行した後、2016年3月に 念願だった自分の店を現在の場所に開いた。

和食が大好きという関根千絵(かずえ)さん。週に2~3日はアルバイトスタッフがいるものの、それ以外は一人で切り盛りしている。

女将さん手作りのおばんざい盛り合わせ

店は地下鉄神保町駅から徒歩2分ほど。アクセス至便ながら、路地裏の雑居ビルの地下1階にあり、一見さんがふらりと入れるような立地ではない。地下へと続く階段を降りると、薄暗いフロアに出る。店は2軒。手前が「おかず家」でその隣に完全予約制の鉄板焼き屋がある。おかず家と書かれたえんじ色の暖簾をくぐって店内に入ると、昭和の食堂のような懐かしい空間が広がる。7人掛けのカウンターの向こうには対面式のキッチンがあり、タイル張りの壁にフライパンやお玉がぶら下がっている。家庭的な雰囲気だが、魚を焼くための鉄灸が壁際に鎮座していて、プロフェッショナルな料理を期待させてくれる。
まずは看板メニューの「おばんざい盛り合わせ」を頼む。「おばんざいという言葉の響きが好きなので、使わせてもらっていますが、京都の本格的なおばんざいというよりは、家庭的なおかずになります。味付けは薄味を意識しています」と女将さん。ややあって食卓に並べられたのは「長芋のたたき」、「ポテトサラダ」、「ピーマンとじゃこの炒め」、「高野豆腐炊き合わせ」、「牛肉と舞茸のしぐれ煮」の5品。いずれも女将さんの手作りである。晩酌にはこれだけで充分なボリュームだが、これで1,700円(税別)というのだからありがたい。器のチョイスとバランスにも女将さんのセンスの良さが感じられる。

料理のベースになる出汁

お父さんが山梨県韮崎市のご出身ということもあり、食材は甲州から仕入れているものが多い。牛肉は甲州牛、豚肉はフジサクラポーク、お米は八ヶ岳南麓で獲れた梨北米(コシヒカリ)、ワインもほとんど甲州産である。
「実は2軒目を三崎町に出したのですが、あいにくコロナになってしまって。最終的に梨北米を使ったおにぎり屋さんにしたのですが、1年半前に閉めました。今は、このお店に集中したくて(笑)。コロナ前はランチもやっていましたが、今は週一のみにしています。基本、ひとりでやっているので、なかなか体力的に厳しくて」。夜のみの営業の日であっても、仕込みをする際には8時から調理場に立っている。料理のベースになる出汁は、日高昆布を50~60°Cで浸出したものを沸騰手前まで熱し、そこに鰹節をふんだんに入れて5分間、沸騰手前の温度で煮出す。この出汁を用いて、素材の味を最大限に引き出すために薄味で調理するように心がけている。
その真骨頂ともいうべき料理が出汁巻き卵。卵3個に対して出汁70ccという黄金比で巻かれた出汁巻き卵は、ふわふわな食感で、噛むほどに滋味があふれ出てくる。女将さんがひとりで切り盛りする小料理屋で、ここまで本格的な和食を味わわせてくれる店というのは、今となっては非常に貴重である。神田で汗水流す戦士たちのオアシスのような存在として、いつまでも暖簾を守り続けてもらいたいと、出汁の染み込んだイワシの梅煮を味わいながら願うのであった。

人気料理のひとつ「出汁巻き卵」。千絵さん独自の黄金比により、ふわふわな食感に仕上がっている。

フジザクラポークのジンジャーソテー。八ヶ岳南麓で飼育された豚は肉質がきめ細かく保水性に富み、とてもジューシー。

本誌が配布される頃は、イワシの梅煮がメニューに加わる予定。店名に「四季の味」を掲げるだけあって、旬の素材をできるだけ用いるようにしている。

当店をご紹介いただいた神田法人会デジタル推進特別委員会の中尾委員長(向かって右手前)と水野第一地区長(向かって左奥)と広報委員の面々が、撮影終了後にやってきた。

※金額は『法人なかま』発行当時のものです。

レポート◎山根和明(広報委員会)

食いしん坊手帖 vol.18

四季の味 おかず家

東京都千代田区神田神保町 2-6-3 B1
電話:03-6268-9766

  • 営業時間
    【平日】17:00 ~ 23:00
    【木曜のみランチ】11:30 ~ L.O.13:10
  • 座席数
    13 席(カウンター7席、テーブル6席)
  • 定休日
    土曜日・日曜日・祝日

当ページに掲載している情報は、『法人なかま』発行当時のものです。現在の情報とは異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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