
宴席に華を添える
伝統と革新の和洋折衷料理

低温調理した東京ビーフにコンソメの出汁を注ぐ。
京都の老舗ブライダル企業が運営
2030年に創建1300年を迎える神田明神。江戸時代を通じて幕府から庶民まで江戸の町全体の総鎮守となった。現在も神田や日本橋など都心部108町の氏神様になっている。
その由緒ある境内にたたずむ明神会館で結婚式が行われるようになったのは明治40年からで、神前結婚式場の草分けといえる。現在は結婚式だけでなく、七五三や成人式などのお祝いや食事会も行われ、企業の新年会や忘年会、各種宴会、パーティー会場としても利用されている。
2019年8月から明神会館の運営会社が、京都のブライダル企業である TAKAMI BRIDAL になった。1923年に呉服商として京都でスタートした100年企業で、現在はお寺のプロデュースなども手掛けている。そのようなこともあり、明神会館の運営を託された。
「私どもは京都に本社がある会社ですが、明神会館の運営にあたっては、創建1300年という歴史に敬意を表し、できるかぎり東京の食材を用い、地産地消にこだわっています。また、神田明神が掲げておられる伝統と革新という精神を、和洋折衷料理で再現するよう努めています。使用する野菜などは、基本的にその日の朝に東京で採れたものを使っています」と料飲マネージャーの岩田大晃さん。

神田明神の境内にある梅の木から採り、一度神社に奉納した梅で作った梅干し

神前結婚式の一コマ。御神殿の右側に建つ平屋風の建物が明神会館
幻の東京都産の黒毛和牛
懇親会や宴会で利用できる部屋は2室。1室は40〜120名(立食だと150名まで)用の「彩の間」、もう1室が6〜40名の「結の間」。料理はコースのみで大きく3タイプがある。ひとつはカジュアルな会合やランチタイムにおすすめの「福」コース。こちらは2段の折箱に旬の食材を詰め合わせた明神御膳。2つめは前菜 ・ お椀 ・ 魚 ・ 肉 ・ ごはん ・ デザートの全6品からなる「禄」コース。そしてもうひとつが「寿」コースで、こちらは祝いの宴席で利用されるケースが多い。いずれのコースも1〜2月、3〜5月、6〜8月、9〜12月で料理内容が変わる。また、最短でも2週間前からの予約が必要で、その際に料理内容も相談して決められる。看板料理のひとつとして掲げられているのが、『東京ビーフ 東京軍鶏のコンソメ東京野菜』。東京ビーフとは東京都の秘境、伊豆諸島青ヶ島で生まれた黒毛和牛を、あきる野市などで育てた東京都産の黒毛和牛のことである。使用するのは黒毛和牛の中でも肉質が柔らかく、脂が筋肉に均等に分布しているメスのみ。霜降りの肉を58度の低温調理でじっくりと加熱し、表面をサッと炙る。この極上肉を載せた皿に、東京軍しゃも鶏というブランドの東京都産の地鶏で2日間じっくりと出汁をとったコンソメスープを注ぐ。さらに配膳された後に、鰹節をふんだんにふりかける。
「通常、ステーキにはソースを用いますが、軍鶏の出汁をとったコンソメスープを使ってみたところ、これがとてもよく、そして「和」の風味を加えるために鰹節を採用しました」とは料理長の関根孝行さん。まさに革新的な和洋折衷料理だ。黒毛和牛、コンソメスープ、鰹節が三位一体となった味はとても深味があり、かつ他では味わえない独特の風味がある。肉と野菜を平らげた後は、コンソメスープをスプーンですくっていただく。ただでさえ濃厚なのに、東京ビーフの肉汁が加わった琥珀色のスープが、五臓六腑にしみわたる。
料理長のこだわりの食材
使用する食材は先述の東京ビーフや野菜をはじめ、料理長自ら生産者を訪ねて現地で味見をして採用を決めたものが大半。お米は青梅市の『江戸っ娘』。希少な東京都産のひとめぼれである。また、梅干しや梅ソース、梅酒は神田明神の境内にある梅の木から採れ、一度奉納したものを使っている。さらに、この梅で作った酢にシソを入れて、主に東京で採れた7種類の野菜を使用した七福神漬けという逸品も作っている。食べるだけで商売繁盛のご利益がありそうだ。
関根さんはこの道35年の熟練。『東京ビーフ 東京軍鶏のコンソメ東京野菜』とともに自信を持っているのが鯛茶漬け。3日間水出しした昆布出汁を60度で2時間熱して昆布を取り出し、ひと煮立ちさせて火を止め鰹節を入れ、すぐに取り出す。これに東京都の伊豆大島で採れた塩を加え、味を調える。米は先述の『江戸っ娘』。鯛は宮城県産。
「ここの鯛はもう15年以上前から使っていますが、業者の魚の扱いが非常に丁寧なんです。魚というのは鮮度や脂の乗りが重要視されますが、実は扱い方もとても重要なんです。さばいてみると、どんな扱われ方をされたのかよく分かります。この業者を信頼しているので、宮城の漁港から直送していただいています」と関根さん。使用するのは脂がほどよく乗った2キロ弱のサイズ。これを1週間以上熟成させ、最後に特製のゴマダレを表面に塗る。「1週間熟成させているので、ゴマダレがスーッと浸透していくんです。自分で言うのも憚れますが、いい仕事しているなと思ってしまいますね(笑)」と関根さんは笑みを浮かべる。
茶漬け用に硬めに炊いたお米の上に熟成鯛を2切れ。ここにお出汁を注ぐ。茶漬けなのに、米は噛みごたえがある。米を噛めば噛むほど江戸っ娘の甘味と昆布と鯛の旨味が溶け合い、鰹節の風味が花を添える。
先述の東京ビーフは「寿」コースならリクエストで入れてもらうことができる。「禄」コースの場合は、東京ビーフではなく国産和牛で同様の料理を楽しめる。
神田明神に相応しい伝統と革新の和洋折衷料理で、宴席に華を添えたい。

熟成鯛を使用した鯛茶漬け。予約の際に要相談。

伝統と革新の和洋折衷料理。地産地消がコンセプトでお酒は創業400年神田豊島屋から仕入れている。

40~120名用の「彩の間」のイメージカット。写真は披露宴仕様。

料理長の関根さんは、生産者の元を訪ねて納得のいった食材のみを使用している
レポート◎山根和明(広報委員会)
食いしん坊手帖 vol.10
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