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和紙への「愛」を貫く、宮内庁の御用も一手に。

山形屋紙店




大正元年建築というレンガ造りの蔵。






130年の伝統を受け継ぐ店舗は、近代的なビルの中にある。

 壁のレンガの厚味は優に20センチはあろうか。本社屋の裏手に立つ三階建ての重厚な「蔵」は大正2年の大火、関東大震災、東京大空襲にも耐えて商品の和紙を守ってきた。四方、がれきの中にこの蔵だけが写る、大震災直後の貴重な写真が残っている。「大空襲は皇居が近いこともあってまぬがれた」。が、例え焼夷弾が落ちてもビクともしなかったはず。今では法的にも技術的にも建築不可能な「蔵」。創業以来和紙ひとすじの、和紙に対する愛情の象徴だ。

─ご創業が明治12年、この地で。

 初代は八王子の出身で、そこそこの家だったらしいのですが、長男ではなかったので江戸へ出て日本橋の山形屋という紙屋に勤めたのです。そして明治12年「暖簾分け」という形で神田に自分の店をもった。それから約130年、後継者ということで私が会社に入って30年、10年前に四代目を継ぎました。

─ずっと和紙ひとすじですか。

 明治、大正の時代、紙は生活の必需品でした。商店には必ず大福帳があったし、家庭や学校、役所でも和紙をどんどん使っていた。従って紙を商う店もかなりあったらしい。戦後は多様化して、紙専業から文房具、事務機などへ転向していった所も多いのですが。古い取引先の売掛台帳が残っていましてね。小林商店。現在のライオンさん。その和紙の帳面が今、向こうの資料舘に収まっている。

─和紙は1000年の風雪に耐えるとか。

 正倉院の御物で証明されています。絹は300年で風化しますが、和紙は1000年原形を保ち、文字も判読できます。宮内庁から永年御用をいただいている種々の和紙製品も、長期間の保存に耐えるよう、正倉院に残る和紙と同じ仕様の特注品です。例えば、毎年歌会始めの時に使う用紙、天皇皇后両陛下の日記帳、一般参賀用の芳名帳など。皇居には温・湿度管理が万全の保管施設がありますし、確実に1000年はもつはずです。

─和紙ブームといわれていますが。

 先程の大福帳の話じゃないけど、ビジネス分野の和紙の消費量は昔の比ではありません。どうしても今は趣味の世界が中心になる。例えば、和紙の強さと雰囲気を活かした「行灯」など、新しい用途の開拓が課題です。それと和紙は作ってから時間が経過すると「枯れる」といわれます。つまり熟成する。書き味が出てくるらしい。裏の「蔵」に眠っているそんな和紙を、ぜひ手で触って選んでいただきたい。紙は通信販売に向かない商品といえます。

─和紙の「相談窓口」ということですね。

 ただ単に和紙を下さい、では困ってしまう。いま全国に和紙は数百種類あり、何に使うかによって向き不向きがある。大抵のご要望にはお応えできると思います。これからは、仕入れのルートをしっかり守っていくこと。人間国宝クラスの方から、頑張っている若手の職人さんまで、広いおつきあいを大事にしたい。そして、たとえ小ロットでも、和紙の良さ、本当の価値がわかるお客様に、末長く愛していただきたいですね。


「和紙についてのあらゆるご相談を」と語る田記社長。







明治時代の大福帳。
美しい保存状態が和紙の強さを物語る。
会 社 名株式会社 山形屋紙店 やまがたや(創業1879年)
住  所東京都 千代田区 神田神保町2-17
電  話03-3263-0801(代)
事業内容各種和紙、和紙製品の製造販売

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