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経営者のための法律相談

第22回 民事執行手続

 株式会社の取締役に就任した場合には、会社法に定める法令上の義務を負うこととなるため、取締役としては義務違反をおこさないように、日常の業務執行等に際しては十分留意される必要がありますが、今回はその主な内容について二回に分けてご説明します。

民事執行制度の意義

 民事執行は、権利を国家機関が強制的に実現してくれる手続です。民事訴訟に勝って判決を得たとしても、それだけではまだ「絵に描いた餅」であります。判決で認められた権利内容を実現するためには、これとは別に、権利を強制的に実現する手続が必要です。また、民事訴訟をしない場合でも、例えば抵当権等の担保権を持っている場合に、その担保権を実行するためには、やはり民事執行の手続を利用する必要があります。従って、紛争の終局的場面では、民事執行手続を利用するかしないかを含めて、これがどのような手続きであるかを知っておく必要があります。

民事執行の種類

 民事執行の典型的な手続は、①強制執行と②担保権実行としての競売です。①強制執行には、権利の内容が金銭債権である場合の「金銭執行」と、物の引渡等を要求する場合の「非金銭執行」の2種類があります。金銭執行の手続は、債務者の財産の種類によって、「不動産執行」、「動産執行」、「債権執行」にさらに分類され、債務者の財産を差押えて売却したり、債務者が持っている債権を取立てたりすることによって実行されます。
②担保権実行としての競売は、担保権が付けられた財産の種類に応じて、ほぼ金銭執行と同じ方法により行われますが、金銭執行の場面と異なり、事前に裁判をする必要がない点で、より迅速に権利を実現することができます。
また、裁判をする必要性がないという点では、金銭債権に限りますが、公証人が作成する公正証書に、債務者が強制執行を受けるような内容を記載しておけば、裁判をしなくても強制執行ができ迅速な解決が図れるので非常に便利です。
以下は、実務上問題となりやすい①「金銭執行」の強制執行について、債務者の財産の種類に応じてどのような手続が利用できるかを説明します。

金銭執行の手続

 「不動産執行」は、債務者の不動産から弁済を受けたい場合の手続です。裁判所は、強制競売開始決定の後、差押えられた不動産を入札等により売却し、債権者に配当を行います。もし、債務者が所有する不動産が賃貸されている場合、強制競売以外に「不動産強制管理」の申立をして、裁判所が選任した管理人を通じて賃料収益から、配当を受けることもできます。
「動産執行」は、債務者の動産を売却して弁済を受けたい場合の手続です。動産は、どこにでも動かせるような財産が多いため、事前に動産の所在する場所を申立書に記載して、まず執行官により、その場所にある金銭や換価しやすい物の差押をしてもらいます。動産でも、不動産以上に価値のある種類も多いため、どこの場所で執行するかが、執行をうまく行うための重要な要素となります。
「債権執行」は、債務者の債権から弁済を受けたい場合の手続です。債権執行の申立と併せて「陳述催告の申立」を行うことで、債務者に債務を負っている者(第三債務者といいます)に対して、債務があるかどうかや、弁済する意思があるかどうか等の確認がされます。第三債務者の陳述書により、弁済が受けられることになれば、それで解決されますが、その第三債務者も支払をしてくれない場合には、第三債務者に対しても強制執行ができます。普通に経営している会社でも、この第三債務者として陳述書を出さなければならなくなることはよくあることです。
 経営者としてこれらの手続がどのようなものかをよく知り、それに関与した場合の適切な対応をして頂ければと思います。

法人なかま 2010年12月号掲載