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経営者のための法律相談

第7回 筆界特定制度について

1, はじめに

従前、隣地との境界が不明な場合は裁判をするしか方法がなく、時間もかかる上、主張を裏付ける証拠を提出する必要もあり、しかもその証拠だけでは裁判官も判断のつかない場合があります。このため、さらに第三者に鑑定させることもあり、そのための費用もかさむという問題もありました。そこで、2006年1月不動産登記法の改正により法務局での手続で迅速に、また少ない費用で筆界紛争を解決する筆界特定制度ができました。
但し、この制度は、不動産登記簿上で「何番地の土地」として区分されている、一筆の土地と他の隣接土地との境(筆界)を定めるのが目的です。この「筆界」と「所有権の範囲(どこまでが自分の土地であるのか)」ということとは、法律上は別の問題で、後者は一般的には「境界線」と言われています。このため、隣地との筆界が上記手続で決まっても、その筆界を越えて隣地の人が長期間越境部分を使用していると所有権を時効で取得されてしまうこともあり、注意は必要です。

2, 申請の手続等

法務局にて筆界特定登記官と指定した登記官が、管轄地の土地筆界についての紛争を担当し、筆界の特定を行います。筆界確定を希望する人(原則は登記簿上の所有権者)は、法務局に対し筆界特定の申請を、手数料を納めて行います。また、測量費用などの負担もあります。
 法務局は、申請があると、隣接土地所有者など関係者に申請があったことを通知するとともに、公告します。

3, 筆界の調査等

必要な事実調査は、弁護士、土地家屋調査士などの専門家から法務局が選んだ筆界調査委員が行います。筆界調査委員は、測量や実地調査もでき、必要があれば他人の土地への立ち入りもでき、調査結果に基づく意見を筆界特定登記官に報告します。
 また、筆界特定登記官は、申請人や関係者にも、意見や資料を提出する機会を与え、また、申請人等に対し質問することもあります。
 さらに、法務局は、関係する行政機関などにも資料の提出等必要な協力を求めることができ、資料等を手元に集中したうえで検討でき、より精度の高い調査ができるのです。
 また、専門家が上記した手順で行うため、より迅速に、幅広い調査ができ、調査期間が大幅に短縮されます。

4, 筆界の特定

 筆界特定登記官は、筆界調査委員の意見や登記関係書類、対象土地の状況や工作物の有無、設置経緯等関係する事情を総合的に判断して、対象土地の筆界特定をします。そして、特定した筆界と、その結論に至る理由の要旨を記載した筆界特定書を作成し、その写しを申請人に交付し、また、筆界特定をした旨の公告と関係者への通知を行います。
5, 筆界特定の結論に不服がある場合
 この場合は、隣地の方に対し通常の民事裁判で争うこととなります。ただ、民事裁判では、法務局での調査等の記録をみることもできますので、これまでのように一から始めるものではないため、時間は相当程度短縮されます。

法人なかま 2009年8月号掲載