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経営者のための法律相談

第33回 遺 言 2

前回は、遺言の方法について、(1)自筆証書遺言、(2)公正証書遺言、(3)秘密証書遺言のそれぞれを説明してきましたが、今回は、遺言の執行についてのお話をしたいと思います。

3. 遺言の執行

遺言者がお亡くなりになった後、実際に遺言の内容を実現するためには、遺言の執行が必要になる場面があります。事実上、相続人によって行われることも多いでしょうが、遺言執行者を選任して、その者が執行していくということもあります。この遺言執行者の選任は、あらかじめ遺言でしておくこともできます。
なお、遺言による子の認知や相続人の廃除といった手続きをするにあたっては、遺言執行者の選任が必要とされています。

4. 遺言書の検認

  1. 遺言書の検認
    遺言の執行のためには、まず家庭裁判所で遺言書の検認をしなければなりません。遺言書の検認とは、一種の証拠保全のための手続きで、裁判官が遺言書の原本を確認し、「どのような紙に、どのようなペンで、どのような内容が書かれているか、日付・署名・押印はどのようになっているか」といったことを調書に記載することになります。
    このため遺言書を保管している人や、遺言書を発見した相続人は、遅滞なく家庭裁判所に遺言書の検認の請求をしなければなりません(民法1004条1項)。これを怠ったまま遺言を執行すると5万円以下の過料の制裁が科されることになっています(民法1005条)。
  2. 遺言書の開封
    また封印されている遺言書の開封は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会がなければしてはいけないことになっています(民法1004条3項)。したがって、遺言書を見つけたからといって、すぐに開封してはならず、そのままの状態で家庭裁判所に検認の請求をしなければならないということになります。
  3. 公正証書遺言の場合
    なお、前回にも少し述べましたが、公正証書遺言の場合には、この遺言書の検認の手続きを行う必要がなく、検認の請求をする必要もありません。これは、公正証書遺言が偽造のおそれがないといえるからです。

5. 遺留分

  1. 遺留分とは
    次に遺留分について述べたいと思います。遺留分とは、相続財産の一定割合を一定の範囲の相続人に留保するという制度のことです。例えば、妻と子供がいるAさんが自分の全財産をBさんに遺贈するという遺言書を書いたとしても、Bさんは全財産を受け取ることはできず、一定の割合でAさんの妻や子供が相続することになるという制度です。
  2. 遺留分の割合
    遺留分の割合は、次のようになっています。
    配偶者・子ども   2分の1
    直系尊属      3分の1
    つまり、先ほどの例でいうと、AさんがBさんに全財産を譲るという遺言書を書いたとしても、Aさんの妻と子どもには、2分の1の遺留分があるということになります。そして妻と子が一人の場合の法定相続分は、それぞれ2分の1ですから、4分の1ずつは相続できることになります。
    なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。
  3. 遺言するにあたっては
    そうするとせっかく遺言書を作成したとしても、遺言者の意思どおりにはならないことがある、ということには注意をしなければなりません。例えば、Dさんに、Eさん、Fさん、Gさんの3人の子どもがいるという場合に、そのうちEさんが事業の後継者になっているので、Eさんに全財産を相続させるという遺言書を書いたとします。しかし、FさんとGさんにはそれぞれ6分の1ずつの遺留分がありますから、Dさんの死後、相続争いが起きてしまうと、Eさんは事業のために必要な財産の所有権すら持てないということになりかねず、その事業の存続さえ難しくなってしまいます。
    このようなことを避けるためにも、FさんとGさんには、事業とはあまり関係のない財産を相続させるような遺言書を作成しておくということも一つの方法と言えるでしょう。
法人なかま 2011年12月号掲載