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経営者のための法律相談

第29回 従業員の行為により会社が損害賠償責任を負う場合

1.はじめに

企業活動を続けて行く中で、従業員が第三者に損害を与えてしまうことは、めずらしいことではありません。今回は、その中でも使用者責任、すなわち被用者(従業員など)が事業の執行につき不法行為で第三者に損害を与えた場合における使用者の損害賠償責任(民法715条1項)についてご説明します。

2.具体例

会社が使用者責任を負う例として、従業員が社用車を私用で使っていて交通事故を起こしてしまった場合、従業員が業務中に部下にパワハラ行為やセクハラ行為をした場合、業務中に行われた喧嘩で怪我をさせた場合、業務に関して金員の騙取を行った場合など、実にさまざまなケースが考えられます。

3.根拠

使用者責任を負うのは、使用者は被用者を用いることによって利益を上げている以上、被用者による事業活動の危険も負担すべきであり(報償責任の原理)、また、使用者が被用者を用いることで新たな危険を想像したり、拡大したりしている以上、使用者は被用者による危険の実現につき責任を負担するべきである(危険負担の原理)という考え方に基づきます。 

4.使用者責任の要件

  1. 被用者の行為が一般の不法行為の成立要件を満たすこと
  2. 不法行為当時に使用者と被用者の間に使用関係があったこと
  3. 不法行為が使用者の事業の執行につき行われたこと

 まず、①使用者責任は、被用者の代わりに損害を賠償する責任ですから、被用者自身に不法行為が成立することが必要であり、被用者に故意や過失がないなどそもそも不法行為責任が成立しない場合には、使用者も責任を負いません。
 次に、②使用関係とは、実際に会社の従業員ではなくとも、実質的に指揮監督すべき関係にあれば足りるとされています。そこで、会社は従業員ではない者の不法行為についても責任を負うことがあります。
 最後に、③事業の執行につきとは、実際に職務の執行行為そのものには属する行為である必要はなく、行為の外形から観察して職務行為とみられる場合には、使用者の責任が認められます。上記2.の具体例は、判例上、全て③の要件が認められたケースです。会社の車を私用で使う行為などは、職務の執行行為そのものではありませんが、行為の外形から観察して職務行為とみられるため③の要件をみたすと判断されました。

5.免責

使用者責任を広く認めるのが判例通説ですが、使用者が常に責任を負わなければならないわけではなく、被用者の選任・監督に相当の注意をしたことや、相当の注意をしても損害が発生したことを主張、立証することにより、免責を受けることができます(民法715条1項ただし書)。 

6.求償

使用者が被害者に損害賠償した場合には、被用者に求償(請求)することが可能ですが(民法715条3項)、損害の公平な分担という見地から、求償権が制限され、全額の請求をすることはできない場合があるとされています。 

7.最後に

従業員の選任や監督に相当の注意をしていれば、会社としての責任は免責されることになりますが、実際にそれを立証することには困難が伴います。使用者責任が発生してしまった場合や、その予防法などは、弁護士にご相談下さい。 

法人なかま 2011年8月号掲載