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経営者のための法律相談

第26回 職務発明

1. 職務発明と会社経営

 発明者に多額の報酬が認められた青色発光ダイオード事件以来、発明が大きな経営の要素となっている会社にとっては切実な問題となっています。しかし、職務発明は、会社規程さえしっかり整備されていれば、従業者の特許権を当然に会社名義にすることができる制度でもあります。そこで今回は、職務発明がある場合に、会社にどんな権利が認められるのか、ご紹介します。

2. 職務発明とは?

 特許法上の職務発明の要素は、(1)従業者等がした発明のうち、(2)使用者(本稿では便宜上「会社」とします。)の業務範囲に属するものでかつ(3)従業者等の現在又は過去の職務に属するもの、です。なお、①の「従業者等」には、取締役などの役員も含まれますので注意が必要です。

3. 職務発明なら当然会社が特許権者、ではないので注意!

 特許法上の発明者は、あくまで発明をしたその個人です。従って従業者の発明ならば、その従業者が発明者です。発明者には、特許を出願して取得する権利(これを法律上「特許を受ける権利」と呼んでいます。)があります(特許法第29条第1項)。出願後、登録されれば原則として発明者が特許権者になり、それは職務発明の場合も同じです。もっとも、特許を受ける権利と特許権(以下「特許権等」)は譲渡可能ですので、譲渡されれば譲受人が特許権者になります。

4. 職務発明について認められる会社の権利とは?

 職務発明の場合、会社には以下の二つの権利が認められています。
(1)当然に「通常実施権」が認められます。
 職務発明に特許権が認められると、会社は、法律上当然に特許権の「通常実施権」を取得します(同法第35条第1項)。従って、会社は従業者の意向に関係なく従業者の発明を利用することができます。もっとも通常実施権があるだけでは、他社にライセンスすることもできませんし、独占権もありません。通常実施権で足りるのであれば、会社規程上何もすることはありません。これで足りないなら、会社規程を整備することが必要です。
(2)適切な会社規程があれば、会社が特許権等を承継します。
 特許法は、発明が職務発明である場合に限って、あらかじめ従業者から会社に対し特許権等を承継させる旨を合意しておくこと(予定承継)を認めています(特許法第35条第2項)ので、多くの会社では、これを「職務発明規程」や「就業規則」などの形で整備しています。これらの規程は、該当する従業者等が入社した時から適用されますので、規程の仕方にもよりますが、後日職務発明がなされたとき、特許権等を当然に会社名義にすることができ、大変便利です。
 もちろん、会社規程がなくても、従業者から特許権等を譲り受ければ会社名義にできますが、その場合には個別の交渉が必要です。

5. 相当の対価はどう決める?

 以上の通り、規程等を整備しておけば、会社は特許権者になれますが、反対に従業者に見返りとして「相当の対価」が保証されているので、これをどう決めるかという問題があります(特許法第35条第3項)。現在一般的なのは、対価の査定を行う委員会を会社内の組織として作り、その判断に委ねて、多種多様な発明に対応するという方法です。

6. 実用新案や意匠の場合も、会社規程が重要!

 なお、特許法第35条は、実用新案法や意匠法にも準用されています。したがって、従業者の職務創作に関する適切な会社規程がないと、当然には実用新案や意匠を会社名義にできません。
 詳しいことは、弁護士にご相談ください。

法人なかま 2011年4月号掲載