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経営者のための法律相談

第23回 取締役の責任 (その1)

 株式会社の取締役に就任した場合には、会社法に定める法令上の義務を負うこととなるため、取締役としては義務違反をおこさないように、日常の業務執行等に際しては十分留意される必要がありますが、今回はその主な内容について二回に分けてご説明します。

1、善管注意義務

 商法330条の規定により、取締役と会社との法律上の関係は「委任契約」になると定められています。このため、取締役は委任契約について定めている民法644条により「善良な管理者としての注意義務」を負います。これは、取締役が業務等を行うに際しては取締役自身の能力にあわせて注意義務を尽くせば良いということではなく、本来「管理者」としてすべき客観的な基準に基づく注意義務を尽くす必要があるということです。このため、業務を行う際に会社に損害を与えたような場合、「本人の能力・知識や見識等によって、自分としては精一杯注意を払って業務を行った」ということだけでは免責されないということを意味します。裁判例においても、この「善管注意義務違反」ということで取締役が会社に対する責任を認めている例も多くあります。

2、忠実義務

 商法355条では、取締役は法令・定款ならびに株主総会の決議を遵守し、会社のために忠実にその職務を執行しなければならないとされています。
 具体的には取締役は競業避止義務が課されており(商法356条1項、365条1項)、会社の営業内容等と競業する行為を取締役に勝手に行われては、本来会社の取引となったはずのものまで当該取締役の利益のために行われかねないことになるため、つぎのような競業行為は株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)の承認がなければできないとされています。
ア 会社の事業に属する取引を取締役個人もしくは第三者のために行うこと
イ 取締役個人もしくは第三者のために会社と取引を行うこと
ウ 会社が取締役の債務について保証すること、その他取締役以外の者との間で会社と取締役との利益が相反する取引を  行うこと
 ただし、取締役が取締役会の承認を得ないで競業行為を行った場合でも、その取引の相手方が会社の承認を受けていないことを知っていた場合は取引も無効となりますが、そうでない場合取引自体は有効とされています。これは、取引の相手方からすれば、競業する行為について取締役会等の承認を得ているかどうかについて確認等することも難しい点もあり、また取引の安全を図るということで有効とされています。
 上記の場合会社が受けた損害額については、上記違反取引によりその取締役が得た利益と同額と推定するとされており(商法423条2項)、その点についての厳密な立証等が必要とはされていません。
また、上記のとおり利益相反行為であっても株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)の承認があれば違反行為とはなりませんが、その取引の形態も直接会社と行う取引だけでなく、第三者を介するなどして行う間接取引であるかは問いません。さらに、継続して多数回にわたり行われるような取引の場合は、個別ではなく包括的な承認を行うことも可能です。

法人なかま 2011年2月号掲載