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経営者のための法律相談

第19回 民事保全手続

民事保全制度の存在理由

 多くの民事紛争は、最終的には訴訟により解決されることになります。しかし、訴訟は訴え提起から判決確定まで多くの手続を要し、時間と費用がかかります。その間に、相手方の財産状態が変化したり、紛争の目的物の所有者や占有者が変えられてしまうことがあり得ます。訴訟で勝訴しても、その時点で相手方に財産がなかったり、目的物が相手方名義ではない場合等、判決が事実上無意味になってしまうことになりかねません。
 そのような事態を避けるため、当事者の申立てにより、裁判所が暫定的に相手方の財産の移動を禁止する等の命令を出して権利者の保護を図る制度として、民事保全の制度があります。

民事保全の種類

ここでは、民事保全のうち、通常多く見られる事案である金銭請求や物の引渡請求で問題となる①仮差押と②係争物に関する仮処分について簡単に説明します。

  1. 仮差押
    これは、金銭請求の場合に相手方の財産の中から、その債権額の範囲で適当な財産を選んでその現状を維持し、将来勝訴した際の支払を確保する手段です。
    例えば裁判所に、相手方の不動産や銀行預金、売掛代金債権等に対する仮差押命令を出してもらうことにより、相手方は不動産の処分、預金の引出、債権の回収ができなくなります。
  2. 係争物に関する仮処分
    これは、不動産等の引渡請求権などを有する場合に、その不動産等の現状を維持するのに必要な暫定的な措置をする手続です。
    例えば、賃貸借契約の解除に基づく建物明渡請求の場合、その建物の占有の移転を禁止する仮処分命令を裁判所に出してもらうことにより、勝手に転貸された場合でも、勝訴判決の結果を、転借人に対しても主張して明渡を求めることができるようになります

民事保全についての注意点

民事保全の制度は一部例外はありますが、暫定的に一定の状態を維持するものなので、訴訟結果と同様の満足を得られるものではありません。つまり、例えば預金を仮差押したとしても、相手方の引出を禁止するだけなので、実際に支払を受けるためには、訴訟での勝訴が必要です。
また、民事保全は、暫定的とはいえ相手方の財産処分等を制限するため、相手方にとって大きな負担となるので、保全を認めてもらうためには、申立の手続費用や弁護士費用の他、その代償として相当程度の担保金を用意する必要があります(金額は事案によります。訴訟で勝訴すれば戻ってきます)。
民事保全は、実務的には必ず申し立てるべき事案や、申し立てることの効果が極めて大きい事案以外では、行う必要がないことの方が多いという印象です。上記のように、保全の申立には通常の訴訟に加えて、相当の費用が必要になりますので、これを行うべきかどうかは事案ごとに弁護士に相談されることをお勧め致します。
なお、逆に民事保全の命令を受けた場合、これに対する異議申立ができます。上記のように、民事保全の命令を受けると大きな負担になりますので、速やかに弁護士に相談して、適切な対応をとることが必要です。

法人なかま 2010年9月号掲載