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経営者のための法律相談

第12回 建物賃貸借契約における更新料特約の有効性について

1、 更新料特約をめぐる判例の動向

近時、平成21年8月27日の大阪高裁の判決を筆頭に、建物賃貸借契約の更新料特約を消費者契約法10条によって無効とする判決がなされ、この判決と同じく更新料特約を無効とする地裁レベルでの判決が複数なされていることをご存じの方も多いと思います。特に、不動産賃貸を行っている方にとっては、更新料収入も見込んで事業計画を立てている場合も多く、この判決についての関心も高いことと思います。
一方、上記判例の後、同年10月29日に大阪高裁の別の裁判体で、今度は更新料特約が消費者契約法10条に反せず有効とする判決が出されています。
このように判断の分かれている判決を前に、更新料特約の有効性についてどのように考えるべきか、控訴審である大阪高裁で下された結論の正反対な2つの判決の事例と今後の展望について解説いたします。

2、 2つの大阪高裁判例の相違点

結論に影響を与えた大きな理由とされているのは、大きく分けて2つの点、すなわち、㈰更新料の法的性質に関する考え方の違い、㈪更新料特約に関する契約内容の相違、です。

  1. 更新料の法的性質に関する考え方の相違点
    更新料特約を無効とした裁判では、賃貸人が主張した更新料の法的性質(更新拒絶権放棄の対価、賃借権の強化の対価、賃料の補充の複合的性質を有する)について、結論としてはすべて否定し、更新料特約は、消費者の利益を一方的に害するため信義則に反し、無効と判断しています。
    一方、更新料特約を有効とした裁判では、更新料を、賃借権設定の対価の追加ないし補充分としての性質を有するものとし、個別具体的な契約内容によって、賃借人にとって信義則に反するほど一方的に不利益なものでなければ、更新料特約は有効であるものと判断しています。
  2. 更新料特約に関する契約内容の相違点
    更新料特約を無効とした事案は、㈰契約期間は1年で以後1年ごとに更新、㈪賃料が1か月4万5000円、㈫更新料が10万円(他に礼金が6万円)というもので、1年ごとに2か月分以上の高額の更新料を支払うという点で、「取り過ぎ」という感の否めない事案でした。
    一方、更新料特約を有効とした事案では、(1)契約期間は2年で、以後2年ごとに更新、(2)賃料が1か月5万2000円(2回の更新後に5万円に減額)、共益費が2000円、㈫更新料が旧賃料の2か月分というもので、一般的な更新料特約からみて、必ずしも不合理とは言い難い内容でした。

3、 今後の展望について

上記の大阪高裁の2つの判決に対しては、どちらも、敗訴した側から最高裁に対して上告がなされています。最高裁の判断としては、(2)更新料特約自体を消費者契約法に反せず有効とする、(2)更新料特約自体一般的に消費者契約法に反するものとして無効とする、(3)更新料特約の内容によって合理的なものであれば有効、不合理な内容であれば無効と、個別的な事案内容に応じて判断する、というものが考えられます。実務的には、(1)であれば問題ありませんが、(2)であれば大きな影響があります。㈫であれば更新料特約が無効とされないような契約内容であるか再検討する必要があります。いずれにしても、最高裁が判断する内容によって、その後の実務のあり方に影響を及ぼすこととなります。当面は、上記2つの判例を参考にしつつ、「取り過ぎ」のないような更新料としておくことが大事だと思われます。

法人なかま 2010年2月号掲載