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経営者のための法律相談

第2回 セクハラの企業責任

セクハラ問題は、セクハラ社員だけの問題ではありません。企業が責任をとらざるをえない場合は、企業にとっては予期していない、しかも予算上にもない出費を伴う問題となるために頭の痛い事項であります。そのための知識を持っておいてよいと思います。
セクハラ(セクシャル・ハラスメント)の定義で、企業責任が問題となる場合のセクハラとは、雇用上の関係を利用して行われる相手方の望まない性的な行為、と理解して良いと思います。この態様は、判例上大きく分けて、対価型と環境型があると理解されています。対価型というのは、性的な言動により被害を受けている女性(又は男性)のその被害に対する対応によりその労働条件に影響を与えるものです。食事や飲み会にしつこく誘われているが、行かないと勤務査定上不利益に扱われるなどの場合です。環境型というのは、職場にヌードポスターが貼ってある、性的な経験を聞く、卑猥な冗談をよく言うなどの職場環境の問題だと理解してよいでしょう。この様な社員の言動がなぜ企業の責任として理解されるのでしょうか。
それに答えるためには法的な3つの構成を説明しなければなりません。
  • 企業責任の法的構成1(使用者責任)
    1つは、セクハラ行為をしている社員の使用者としての責任です。
    企業の「事業の執行について」与えた損害と言えるかどうか条文上問題となります。外形的に見て事業を行う上での行為でなければ、この責任を負うことはありません。例えば、会社の人間が数人集まって休日に個人的な旅行に行ったときに生じた問題であれば、社員間の問題であっても事業とは関係のない行為であり、会社が使用者責任を問われることはありません。
  • 企業責任の法的構成2(債務不履行責任)
    企業は、一般的に社員と雇用契約をしていますが、その雇用契約上の雇用主の義務として社員の職場の環境を整える義務があると解釈されています。職場の安全配慮義務の延長上に職場での環境配慮義務があるとされています。
    社員教育でセクハラの注意を全くしない、職場環境がセクハラだと言われかねない状況にあるなどの場合、企業としての職場環境を配慮する義務を履行していないと言われる可能性が高くなります。
  • 企業責任の法的構成3(代表者のセクハラ)
    企業の代表者自身がセクハラをした場合は、原則として企業そのものがその代表者の行為の責任を負担することとなります(会社法350条)。説明なしで気をつけましょう。

2, 企業として必要なこと

企業としては、責任を問われないための予防という観点と、より働きやすい職場環境を作るということが同じこととなるのですから、その環境作りをすべきでしょう。その環境作りについては、厚生労働省において「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年告示615号)として詳しい内容が記載されているのでこれをよく読み社内での環境作りをすべきでしょう。そのいくつかを紹介すると次の通りです。

  • セクハラがあってはならないとする企業の方針の明確化。
  • 就業規則等の規定にセクハラをした者の対処を記載し、社員に周知させ、啓発する。
  • セクハラ相談窓口の設置(弁護士がこの窓口を引き受けています)。
  • セクハラがあったときの適切な対応をきめ、再発防止のための措置をすること。

この様に誠実な企業の対応が企業を防衛することとなるのだと理解下さい。

法人なかま 2009年3月号掲載